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MAGCHIMERA WARTIME 11
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黄色いハンカチの誘惑
2004年02月06日発行
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CONTENTS
▼ 黄色いハンカチ
▼ 大量破壊兵器
以上、益岡賢「整理しておくべきことの、いくつか」
2004年2月7日より
http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/
はじめに
「黄色いハンカチ運動」というものがあるらしい。イラクに駐留する自衛官の無事を祈る象徴として、黄色いハンカチを店頭や車に掲げたりするんだそうだ。イラクに派兵された陸上自衛隊第二師団本部のある北海道旭川で始まり、そろそろ全国区に格上げしそうな気配とか。
http://news.aol.co.jp/story/news.date=20040127062446&company=40&genre=05&sub=001&article=0000a491.html
旭川を訪れた知人からの報告によれば、駅前のロータリーには無数の黄色いハンカチがたなびき、目抜き通
りに一定の間隔で並ぶ雪だるまが揃いの黄色いスカーフを付けていたそうだ。
黄色いスカーフを付けた雪だるまの群・・・かわいい?
黄色いハンカチ運動に共感する、もしくは、もう黄色いハンカチ(もしくはリボン)を身に付けている人は派兵に賛成なの? まずこれが疑問。おそらく、多くの人は大賛成ではないだろう。賛成ではないが、行ったからには任務を全うして無事に帰って来て欲しいんだろうと推測する。つまり、反対ではないってこと?
これって、「なしくずし」を信条とする現小泉政権(だけじゃなくて、自民党政権はほとんどずっとこれだった)に、結果
として降参(賛成)してない? 「なんだかんだ言ったって、もう自衛隊はイラクに行ったんです。行ったからには持てる力のすべてを使って貢献してもらいたい。みなさんの応援が必要なんです」てなことを言ってたような気がする、かれは。
同じようなことがつい最近あった。「青いリボン運動」だ。
青いリボンは被拉致者を北朝鮮から連れ戻せ、という運動の象徴だったらしい。かれらの不幸な境遇に共感した多くの人が青いリボンを身につけ、また多くの人が個人のホームページに掲げた。全国的にこの運動が広がったおかげで日本人の心はひとつになり、被拉致者は無事帰国し、いまでは幸せに暮らしている、だろうか。
青いリボンは、その運動の開始からほとんど時を置かずに北朝鮮バッシングの象徴にもなった気がする(少なくとも、わたしはそう感じた)。青いリボンを掲げたホームページのいくつかに、そうした記述が見られたからだ。青いリボンを身につけた政治家や官僚が、対北朝鮮外交に何か有効な働きをしただろうか。
黄色いハンカチはどうなるのだろう。黄色いハンカチは近い将来、何を象徴するのだろう。情緒的な運動はしばしば捻れるし、当初の目的から外れて利用されやすい。「自衛隊が無事に帰って来られなくてもいいんですか?」と問われて否定できる人はまれだろう。
東京新聞特報「イラク派遣賛成、反対を逆転 なぜ?」世論調査
「黄色いハンカチ運動 異議挟めず」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040130/mng_____tokuho__001.shtml
上記は「東京新聞」の記事です。余談ですが、東京新聞はイラク派兵に明確な反対の立場をとり、日本のインディペンデント紙(開戦前より一貫してイラク戦に反対し続けているイギリスの高級紙、部数も延びている)になりつつあるようです。この際、購読紙を東京新聞にかえてこの姿勢を応援するのも良いかも。以下、最近の「東京新聞」より2本ご紹介します。
特報「小泉政権 お寒い情報収集能力 自衛隊 郷に入れど郷に従えず?」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040203/mng_____tokuho__000.shtml
特報「ベトナム帰還兵が語る 本当の戦争」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040205/mng_____tokuho__000.shtml
マグキメラ11号は、益岡賢さんの原稿「整理しておくべきことの、いくつか」より筆者の許可を得てホームページより転載します。この原稿は「大量
破壊兵器」「黄色いハンカチ」「復興支援」の3つの大きな柱から成り立っていますが、この中からまず「黄色いハンカチ」、続いて「大量
破壊兵器」を掲載します。「黄色いハンカチ」のテキスト中であげられている当該記事のURLは文末にまとめました。わたしの判断で挿入した記事も含まれます。
また、「大量破壊兵器」「復興支援(未掲載)」にも他の記事へのリンクがありますが転載にあたってリンクは省略しました。ぜひ、益岡さんのホームページを開き、リンク先のテキストもお読みください。(藤澤みどり)
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黄色いハンカチ
益岡賢
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「整理しておくべきことの、いくつか」より
http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/
幸せの黄色いハンカチが旭川の商工会議所周辺を中心にはやっているらしい。2004年1月27日旭川の「常磐ロータリータワー」に登場したのを皮切りに、隊員の無事を祈る運動で、「有志」たちはこれが全国に広まって欲しいと考えているという(黄色いハンカチ運動の紹介ページ[*1]もある:旭川商工会議所が連絡先である)。さらに、「イラク復興支援活動で輸送艦を出す海上自衛隊呉基地のある広島県呉市で、約270の飲食店でつくる呉飲食組合(北川克之組合長)が隊員の無事を祈り「黄色いハンカチ」を店頭に飾る運動を始めた」そうである[*2]。
広めている中には派兵に賛成している右派団体もとかいった情報[*3]もあるし、石破防衛庁長官がそれに言及したりするなど、派兵を正当化する動きに利用されていることは否めない(当然そうなるだろう)。とはいえ、黄色いハンカチ運動に実際に参加している人々は、政治的な意思はなく、隊員の無事の帰還と家族の支えになることの2点のためにやっているらしい。浅井久仁臣氏もホームページで「黄色いハンカチを掲げようとした旭川の市民たちは、純粋に自衛隊員のことを心配して思い立ったことだと信じます」と書いている[*4]。
実は、まるで理解できないのは、「純粋に自衛隊員のことを心配する」ことが「隊員の無事を祈る黄色いハンカチ」に結びつく、あるいは逆に「派兵された隊員の無事を祈る黄色いハンカチ」を掲げることが「純粋に自衛隊員のことを心配する」ことであるというロジックである。
ちょっと考えてみよう。パートナーが自分の目の前で交通事故にあって血だらけになったとしよう。救急車を呼ぶ前に無事を祈って黄色いハンカチを胸ポケット(そんなもんが付いている服を着てたとして)に入れるだろうか? あるいは、例えば学校の校長先生に法律で禁止されている高速道路の横断をさせられようとしている子供を前にして、校長先生に抗議もせず、それを止めようともせず、「無事に渡りきることを願って」黄色いハンカチを腕に巻くだろうか、フツー? 親が、親でなくてもそれを目にした人が、止めもせずに黄色いハンカチを胸ポケット(付いていたとして)に入れたら、それが「純粋に子供のことを心配」することになるだろうか?
フツー、そんなことしてたら、「何しとんねん、やるべきこともやらずに」と批判されるだろう。事故にあったパートナーを救うため、あるいは子供を事故の危険から回避させるために具体的にできることをせずに、「無事を祈る」ことが「純粋にパートナーや子供のことを心配する」ことに全く1パーセントたりともならないことは、結構はっきりしている。本人がいかに「わたくしは純粋にパートナー/子供のことを心配して黄色いハンカチを掲げたのです」という自己意識を持っていて、そう信じていようと(ついでに美しい涙を流して黄色いハンカチを掲げた人同士で自分たちがどんなに美しい心でがんばったか確認しつつ慰めあおうと)、そんなものは、実際に心配しているのではなくて、その状況を利用して自分の物語に吸収し自己陶酔しているだけだと見なされるだろう。意識と認識は異なる、というのは少なくともヒューム以来の常識(「常識」なんて言うのはフェアじゃないけど)だったはずである。
では、自衛隊を巡って、具体的にできることはないのだろうか? まず、イラクに派遣されたから「無事を祈る」話が出てきたのだから、これ以上の派遣を阻止し、派遣された人々は一刻も早く帰ってきてもらえるよう働きかければいい。例えば、自衛隊イラク派兵差止北海道訴訟[*4]は弁護士有志の手弁当でやっていて募金を募集しているから、それを支援したっていいし、イラクへの派兵に反対する署名[*5]だって2004年2月15日までやっている。また、憲法改悪反対署名運動[*6]というのもある。さらに、例えば毎日新聞2004年2月4日東京朝刊の記者の目[*7]には、斎藤義彦記者が現地を取材して、義のない派兵を止めて勇気ある撤退をすべきという正論を書いていたりするから、そうした記者に激励の手紙やメールを送ることもできる。
こうやって考えてみると黄色いハンカチやらリボンを掲げたり結んだりするまえに、「本当に自衛隊員のことを心配する」ならば、色々やることはあるように思えるんだけれど・・・。だから、そうしたことをせずに黄色いハンカチやらリボンを掲げたり結んだりしていることは、本人の意識はどうであれ、単に「自分たちは本当に自衛隊員のことを心配している」という自己陶酔に浸りたいために自衛隊の派遣が必要でそれを自分の陶酔のために利用/消費しているように見えるし、現実にそのように認識されざるを、得ない。
*リンク先一覧
[*1] 平成16年1月吉日「黄色いハンカチ運動」有志一同
「私たちは掲げます・・・私たちは祈ります・・・黄色いハンカチ運動」
http://www.ccia.or.jp/yellow/
[*2] 2004年2月6日 Creative Space トピックス
「派兵賛成の黄色いハンカチ運動」
中川秀直の元私設秘書が顧問の団体が派兵基地・呉で画策
http://www.creative.co.jp/top/main.cgi?m=635
[*3] 2004年2月4日 阿修羅掲示板
「黄色いハンカチの発案者は、予備自衛官
ひろめていのも民間人のふりをした予備自衛官」
http://www.asyura2.com/0401/war47/msg/586.html
[*3参考] 2003年12月23日 阿修羅掲示板(長文です)
「日本における『宗教右翼』の台頭と『つくる会』『日本会議』
日本の戦争責任資料センター事務局長 上杉 聰
http://www.asyura2.com/0311/nihon10/msg/1179.html
[*4] 2004年2月1日
「私の視点−黄色いハンカチの先に見える日本の行方 浅井久仁臣」
http://www.asaikuniomi.com/gulfwar2-yellowribbon.htm
[*4] 自衛隊イラク派兵差止北海道訴訟
http://www.hg-law.jp/iraq/
[*4関連情報] 2004年1月27日
アルジャジーラが「自衛隊イラク派兵差止訴訟」をトップニュースで報じた!
http://ch.kitaguni.tv/u/1023/%BB%FE%BB%F6%A1%F5%BC%D2%B2%F1%CC%E4%C2%EA/0000043579.html
[*5] 戦地 イラクへの自衛隊派兵に反対する緊急署名
「侵略戦争の過ちを繰り返すな! 歴史的な闘いに立ち上がろう!
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/signature5/callfor.htm
[*6] 許すな!憲法改悪・市民連絡会
「憲法改悪に反対し、9条をまもり、平和のために生かす署名運動」
http://www4.vc-net.ne.jp/~kenpou/
[*7]2004年2月3日毎日新聞東京朝刊
[記者の目]イラク派遣の自衛隊=斎藤義彦(バグダッドで)
「勇気ある撤退」すべきだ − 怖い「うわさの事実化」
http://www.mainichi.co.jp/eye/heiwa/eye/art/20040203M064.html
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大量破壊兵器 益岡賢
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「整理しておくべきことの、いくつか」より
http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/
米国による大量破壊兵器捜索チームの指揮にあたったデビッド・ケイ団長が辞任し、「大量
破壊兵器はない」と発言したことは、「爆弾証言」として大きく報じられた。実際のところ、大量
破壊兵器がないことは、米国がイラクに侵略する前からわかっていた(米国がイラク侵略に踏み切ったこと自体、イラクに大量
破壊兵器が無いことを示していた)。
このこと自体については、ケイ発言よりはるか以前に、様々な情報源から明らかになっていたことである。例えば、昨年、元国務相情報担当官グレゴリー・ティエルマンは、次のように言っていた:「ブッシュ政権は、イラクの軍事的脅威について、米国の人々に正確なことを伝えなかったと思う。政府は、信仰的な態度を持っていた・・・答えは知っている、その答えを支持する情報をよこせ、というのである」。
そして、サダムがニジェールからウラニウムを買おうとしたとか、核開発に適したアルミニウム管を保有しているとか、国際原子力機構(IAEA)報告ではイラクが核兵器開発まであと6カ月のところにいるとかいった、米国政府が持ち出した主張は、すべて、完全に根拠のないものであることが、既にずいぶん前からはっきりと示されていた(ニジェールの件については米国の元駐イラク大使代理ジョセフ・ウィルソンにより、アルミニウム管についてはIAEAの代表モハメド・エルバラダイにより、IAEA報告についてはIAEA自身により)。
最初っから、米国政府は大量破壊兵器が無かったことを知っていたし[日本政府だって知っていただろう]、さらに、米国のイラク侵略が大量
破壊兵器についてのものでなかったと、ポール・ウォルフォウィッツがバニティ・フェア誌に述べている:「イラクでの戦争を行う主な正当化のために大量
破壊兵器に焦点を当てるという決定は、官僚的理由でなされたーーー他に多くの重要な要因があった」。
ここでは、米国が、大量破壊兵器が無いと知りつつ、それをイラク侵略の正当化に用いたということを問題視したいのではない[日本を始め多くのメディアではケイ発言との関係で、それが主題化されているが]。問題視しておかなくてはならないのは、そもそも、「大量
破壊兵器に焦点を当てる」ことで「イラクでの戦争を行う主な正当化」が可能であるという主張とそれが受容される前提そのものである。
で、整理しておきたい単純な点: 「ある国が大量破壊兵器を所有していることは、その国に対する武力攻撃を正当化するものでは全くない」ということ。
国際法的にいうと、国連憲章は、「国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別
的又は集団的自衛の固有の権利を」認めているだけであり、どこかの国が大量破壊兵器を有しているからといって武力行使することを認めていない。いなかる国際法も、そんなことを認めてはいない。
大量破壊兵器を保有していることが攻撃の「正当」な理由になるならば、真っ先に米国が「正当」に攻撃されてしかるべきということになろう(ついでロシアや英国・フランス・中国・インド・パキスタン・イスラエル・・・日本などが)。特に、米国などは、単に最大の保有者であるだけでなく、使う意志のあることを繰り返し示唆しているのだから。
ところが、現実には、主流派メディアのほとんどで、イラクやリビアの大量破壊兵器については色々論ぜられ[従ってこれらの国々による大量
破壊兵器の保有はこれらの国々を攻撃する正当な理由になることが暗に前提とされ]る一方、「大国」の大量
破壊兵器についてはほとんど議論の対象とならない。
結局、大量破壊兵器の保有が武力攻撃の正当な理由になるなどという主張は、従って暗にそれを前提に進められる大量
破壊兵器の有無をめぐるセンセーションは(大量破壊兵器がなかったから侵略は正当化されないのではといった議論をもーーーそれが単体でなされるならばーーー含めて)、国際法の破棄と「大国」による侵略の促進に貢献していることになる(しかも、無くたって「無いとは限らない」とさえ言えばいいという小泉首相や福田官房長官のような者たちもいる:そうなると、ちょいと気に入らないから、あいつのあれが欲しいから難癖をつけて侵略しちゃれ、という、まさに今アメリカ合州国がやっていることになる)。
こんな観点からケイ発言をめぐる小泉首相およびその周囲の、「[大量破壊兵器が]無いとは断言できない」とか「ないという保証はない。あるという可能性が高い」といった発言とそれをめぐるメディアの上のやりとりを見ると、その全体が、大量
破壊兵器の保有は何ら侵略を正当化しないという原則を隠蔽し破壊するために計算されて用いられているようにさえ見える。この議論のかたちでは、常に「我々」は嘘をついたり間違えたりするかも知れないが、それでも「奴ら」についての判断を行う権利を維持しているという構図は変わらない。朝三暮四という言葉を思い出す。2月6日付朝日新聞に「CIA批判にテネット長官異例の釈明『脅威あると言ってない』」という記事があるが、侵略の不法性を大量
破壊兵器の有無の議論に差し替えることに貢献しているだけのゴミゴシップという感じである。
だから、書いたり口に出したりしてみるとあんまり当たり前で真抜けたように聞こえるけれど、何度でも繰り返しておこう。
「ある国が大量破壊兵器を所有していることは、その国に対する武力攻撃を正当化するものでは全くない」と。
米国のイラク侵略攻撃と占領は、大量破壊兵器が見つかっていようが見つかっていまいが、不法であり不当であったと。
そして、大量破壊兵器がなかったことは、戦争の大義が無かったことに関わるのではなく、単に米英や日本の犯罪性にさらなる嘘があからさまに加わっていることだけを示している。当たり前のことだし、多くの人が知ってはいることだろうが、やはり繰り返して置こう。評価され語られるべきは、まず、国際法に違反してイラクを侵略し多数の人々を殺害した/している米英、そしてそれに追従する日本である。
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MAGCHIMERA WARTIME 11
2004年02月06日発行
【編集・発行】藤澤みどり
midori@dircon.co.uk
【melma ID】m00101856
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