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MAGCHIMERA WARTIME 01
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サダム悪魔論を危惧する
2003年4月1日発行
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CONTENTS
▼イスタンブールから 戦中編01
▼中マダムの英国村日記 戦中篇01
▼フセイン悪魔論の危険性
▼戦時詐欺 石油とはまるで無関係にサダムはヒトラー
▼ ウェブサイト情報 01
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はじめに
「湾岸戦争の子どもたち」写真展UKツアーの藤澤みどりです。突然ですが短期集中のメールマガジンを発行することにしました。1号目はわたしのメーリングリストに載っている方、全員に送ります。次号から不要なかたは申しわけありませんがメールにてお知らせください。
また、使用した記号がどの程度文字化けするのかよくわかりません。いちじるしく化けてしまった場合はお知らせいただけると助かります。次号から気をつけるようにします。どうぞよろしくお願いします。
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編集発行 藤澤みどり
'Children of the Gulf War' photo exhibition UK tour
http://www.chimerafilms.co.uk/children.html
midori@dircon.co.uk
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イスタンブールから 戦中編 01
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【イスタンブールのとも江です】 (3月21日)
トルコ議会はアメリカに「HAYIR!(NO!)」と答えましたが、第2弾がすぐ来るということだったので、その対応を見てからお返事をしようと思っていたところ、残念なことに先に戦争が始まってしまいました。
イスタンブールに関しては、平穏でいつもと変わらない日常を過ごしています。日本大使館からもまだ全く何の連絡も来ないところを見ると、日本政府はトルコが危険になると言う危惧は今の所していないと言うことだと思います。
しかし、イラクトルコ国境地帯にはトルコに避難しようとするイラク国民(殆どが北部に住むクルド系)で溢れ返っています。湾岸時には60万人受け入れたそうですが、今回は100万人を超すだろうといわれています。今年は寒冬で、国境地帯は雪に埋もれ、気候はとても厳しく、本当に可哀想です。人道問題、クルド独立問題、経済問題、衛生問題<、難民の保護だけでも大変な問題です。子沢山のクルド人が幼い子供を大量
に連れて徒歩で、耕運機で必死に逃げようとしているのは本当に辛い光景です。
昨日の新聞で、アメリカに賛同しているわずかな国のリストの中に「JAPONYA(日本)」の文字を見つけた時はショックで憤りを感じました。小泉首相のブッシュ擁護の言葉は余りにもアメリカの肩を持っていて一方的で虫唾が走りました。トルコでは今日も一日中、至る所で反戦プロテストの嵐でした。
あ、今、最新ニュースで、トルコがアメリカの第2弾を正式に受理したそうです。日本もトルコも、結局、アメリカの望みどおりということですね。本当に悔しいです。世界もアメリカやイギリスの国民自体もが、賛成していない戦争を、大統領の個人的見解だけで成立させられるアメリカの政治制度は狂っていると思います。
もう、後は一刻も早く終戦を迎えることができるよう、人災も環境汚染も、歴史的遺物の破壊もないよう祈るだけです。
今、首相の演説が始まりました。「トルコはこの戦争は望みませんでした。が、残念ながら戦争が始まってしまいました。そして、この戦争にトルコが巻き込まれないようにすることは実際問題として不可能となりました。トルコを守り、被害を最小にするため、平和を一刻も早くもたらすため、アメリカの提案を受け入れる決意をしました」のような内容でした。
実際、アフガニスタンの時も、平和維持と国復建にトルコは尽力を尽くしたし、今も駐留しています。今回は、アフガニスタンとは全く状況が異なりますが、イラク側もトルコの苦しい判断は理解できると思います。
主人の実家のアダナに今、義母が帰っていますが、今回の決定で、クウェートに匹敵する最前線基地になってしまいますね。
ブッシュとその支持者に天罰が下りますように。(略)平和で綺麗な地球の未来を、子供たちの明るい将来を祈って。
【トルコにおけるイラク戦争】 (3月26日)
トルコは、イラク国境周辺に「渡航延期」が出ている以外は、「十分注意」の状態で、日本大使館側からも安全情報などは一切来ていません。
イスタンブールは、タクシム広場周辺で、反戦プロテストが行われている程度で、全く日常生活に変化はなく、戦争はアフガニスタンの時と同様、イスタンブール住民にとってはTVの中の世界という感じです。イスタンブールに直接、戦争の影響があると考えている人は極めて少ないです。
今日のニュースによると、イラク戦争問題で最も話題になっているのは、以下の2点です。
1.イスケンデルン、アダナ(インジルリク基地)の米軍は撤退するのか?
2.トルコ軍は北イラクに進軍するのか? アメリカやEU等、他国に反対されても決行するか?
1に関しては、まだ、様子見と言うのが現状のようです。撤退を始めたと言うニュースも報道されましたがまだ、実際は待機の段階のようです。
2に関しては、ニュース番組でアブドゥッラー・ギュル外相(元首相)が話していたことですが、トルコ軍の北イラク国境派遣は、あくまでもトルコの治安維持のためである。前回の湾岸戦争で、イラクからトルコに流入した難民は50万人に上り、その中には民間人だけでなく、兵隊やテロリストが多く含まれており、その後、長年、トルコはテロ問題に苦しんだ。今回、前回の二の舞にならないためにも、非民間人はトルコ国境内に入らないように、イラク国境内で止めなければならない。そのために、トルコ軍が北イラク国境に入るのはやむ終えない。という見解でした。
一方、イラク国境付近には、化学兵器や核兵器対応の専門家や、移動病院、医療隊なども多く派遣され、人道的救済や環境破壊への対応などもなされています。とにかく、トルコ政府が繰り返し言い続けているのは、「最小の被害で最短の終結」ということです。
一般的には、トルコ国民はイラクに同情的で、今まで戦争賛成とかアメリカの言い分に正当性を感じるという人には会った事がありません。
また、トルコ国民のこの戦争による最大の危惧はPKK問題(クルド独立テロ)の再発です。近年、ようやく首謀者のアブドゥッラー・オジャラン氏の逮捕に成功し、EU加入に向けてクルド系住民への対応の向上に取り掛かった矢先なので、この問題は深刻です。私は添乗員をしていた頃、クルド住民が多くすむ東南トルコに何度も添乗で行きましたが、当時はクルド・テロリスト摘発のためのキャンペーンの真っ最中で、政府の爆撃で寒村になったり、弾丸の穴だらけになった悲惨な状況のクルドの村々を数多く見ました。クルド系住民は、子沢山なだけでなく、しっかり戸籍登録していなかったり、未入籍のまま一夫多妻だったりするので、実際はトルコの正式発表よりはるかに多くの人口をクルド系住民が占めます。彼らは日常会話ではクルド語を話しています。当時、私が旅行して感じたところでは、実際は全人口の4割近くをクルド系が占めるのではないかという感じでした。しかし、全てのクルド系住民が独立を求めているわけではもちろんなく、私の周りにも多くのクルド系のトルコ人が普通
に生活しています。独立運動をしていたのは、寒村地帯の貧しい就学率の低い地域のクルド人です。例えば、私の夫もアラブ系トルコ人ですし、トルコは多民族国家なので人種は様々ですが、たいていの人はトルコ国民であることに満足しています。
イスタンブールに住む外国人も、今回のイラク戦争で再びトルコ政府によるクルド弾圧がおこりEUへの道が遠ざかるのでは?と考えている人は多いようです。今日のニュースでも、今回の戦争で、アメリカが勝利しても、イラクが勝利しても、一番被害を被るのは、北部のクルド系住民だろうと専門家の一人が語ってました。
また、今回の戦争により、不謹慎ですが、軍用機や戦車など戦争ものの玩具類や、迷彩
模様の洋服なども売れているようで、ショーウィンドーなどに並んでいます。
主人は、観光関係の仕事をしていますが、外国人旅行者は、世界放浪中のバックパッカー以外は殆ど見かけなくなりました。アメリカ人は少しいますが<。アフガニスタン戦争時も、アメリカにいると怖いからと海外に旅行に出ていたアメリカ人は多かったようですが、今回もアメリカ人はまだ、トルコに観光に来ています。
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中マダムの英国村日記 戦中篇 01
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【開戦前の日記】
私の住んでいる村は実はテロの危険度が高いらしい。先週、ママ友が笑いながら教えてくれた。彼女の夫はロンドン警察の刑事なので説得力がある。この話をさらに友人達や数人のママ友に広めるが(これって噂を振り撒いてるのか???)殆どが笑いながら「え〜っ、冗談やめてよぉ〜っ」に始まり「でも、それ言えてるわよね〜。」に終わる反応を示した中、唯一、アイルランド人のママ友だけが「テロよりも交通
事故とかに遭う確率の方が高い!」に始まり「私も戦争は嫌だけどサダムみたいな悪人を除くには戦争しかない」に終わった。
どうも、近くに空軍(RAF)基地や重要な軍施設があるだけが原因ではなく、ロンドンは警備が厳重なので、郊外・田舎が狙われやすいらしいのだ。でも、誰も全く心配している様には見えなかった。長年、IRAの爆弾騒ぎで脅かされていた身(私も含む)にとっては「またかよ〜? 今度は何? 化学テロ〜? 予防注射あんの?」というのが正直な感想かもしれない....。
この村には、ユダヤ系住民が多く、シナゴーグ、ユダヤ系学校、ユダヤ系デリカテッセンだけでなくユダヤ人墓地もあるが、少数のイラン人家庭を除いて回教徒が殆ど住んでいない。他方、隣接する街にはモスクもあるし回教徒が少なくない。もし、この戦争が回教徒対キリスト/ユダヤ教徒にでも発展する事になったら、非常に「微妙な」地域かもしれない。平和の尊さを見にしみて知っている年輩の市民レベルでは暴動等は有り得ないが、英国生まれの若者は、複雑だ....。
イラン人の友人家族はユダヤ系住民に囲まれて暮らしているが、もちろん、嫌がらせ等を受けた事は無い。イスラエル政府の対パレスチナ政策や暴行を恥じるユダヤ人は多い。英国の公立小学校では、色々な文化や宗教について詳しく学習するし、今度のイラク戦でも英国内の回教徒に対する慎重な配慮が、政府やマスコミだけでなく一般
市民からも感じられる。
ただ、以前、つい最近新装開店した雑貨屋の元店主(50代・ヒンズー教徒)が私が日本人だと知って嬉しそうに「仏教とヒンズー教は似ている。」と言った後「正直に言うと、回教徒だけは我慢できない。どうしても理解できない。」と、恐めの顔をさらに恐くしながら静かに付け加えたのを思い出す度、きっと英国の一般
市民も、外国人や、異教徒の事を「よく理解らないけど、とりあえず、仲良くやっていくべきなんだろう」と考えているのではないかと思う。
【開戦後の日記】
対イラク戦争第一日目。正直に言うと、この地域の住民からは妙な安堵感を感じる。クウェートの砂漠で宙ぶらりん状態になっている軍人達を待つ家族の気持が、身近に感じられる地域だからだろう。さっきFish
& Chipsのお店でTVニュースを見ながら喋ったオジサンも「もう、こうなったら、一日も早く終えて帰って来てほしい」と言っていた。弘治のクラスのママ友のご主人も空軍に属している。皆、夫や息子に無事で帰って来てほしいのだ。軍人を出す家族は、世代を越えて何人もの軍人を出す傾向があるので、家族の誰かがドイツに駐屯していたり、実際に今度の戦争に出陣したりしている。
現在のイラクにとって「サダム一家を亡命させろ」と通達するのは、戦前の日本に「天皇を亡命させろ」と命令するのと大差ないかもしれない。日本人には、その不可能さが理解る。そして、「窮鼠、猫を噛む」という諺も。特攻隊、人間魚雷、一億玉
砕...。わざと不可能な選択をつきつけながら、自国民を、この「正しい戦争」によってイラクの人民が救われる、という幻想によって納得させようとしている政府達。第二次大戦中、ユダヤ人収容所と虐殺の噂が流れて来ても「ドイツが、そこまでするか?」となかなか手を下さなかった「罪悪感」と、キリスト教精神さらには十字軍精神を妙に操作している様に思える。
戦争も紛争もテロ活動も交通事故も同じ。一般人にとって、一番、肝心なのは、とどのつまり、自分や愛する人や自分の財産が被害を受けるか受けないかでは? そして、何かを失うまでは、どんなに危険が身近に迫っていても、実感が湧かないのかもしれない。
先週から英国には珍しく好天気が続き、連日友人に会ったりママ友と子供達を連れて公園へ遊びに行っていた。開戦前夜、ザラついていた心も咲き乱れる花と雲一つ無い青空に慰められた。こんな「些細な」事が、生きる力になって、例えばパレスチナの様に徹底的に追いつめられた地獄並みの環境でもたくましく生き続けられる様に、人間は組み立てられているんだろうか。それが自然の与えた生命力(本能?)なんだろうか...。
数週間前、英国のTVニュースで報道されたイラク、中流階級の家の庭に井戸を掘る人達、マーケットで売り買いする人達、彼等の上に広がっていた青空、そして青空の下の笑顔が目に焼き付いている。
【中マダム】英国に棲息する事16年(ロンドン8年村8年)、中国人の夫と男児ふたりとともにイギリスの秩父(ちょっと違う?)に在住。英国と英国人の温厚な「地味さ」と「ユーモア」が好きです。
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フセイン悪魔論の危険性
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以下はある掲示板からの無断転載です。
「(前略)確かにフセインは許し難い独裁者です。これは金正日にも同じですが。フセインにとってイラク国民など、自分の駒であり、捨て石に過ぎません。イラク国民の命など、自分の盾に過ぎません。連日アメリカ軍による、市民への誤爆が報道されています。しかしもしかしたら、イラク軍による自作自演かも知れません。フセインにとって国民の命など虫けら同然なのでしょう。そのような悪魔の如き指導者を、イラク国民やアラブの人々が、サダムに、血も魂もすべてを捧げると言った、シュプレキコールが報道されていました。もっともやらせかも知れませんが、見ていて胸が押しつぶされそうになります。そんなフセインはやはり抹殺すべき存在だと思いますが。でもブッシュの強引なイラク攻撃は、やはり許せません。(以下略)」
こうした発言を聞いたことがありませんか? 直接耳にしなくても、ネット掲示板やメーリングリストをのぞくといくらでも読むことができます。反戦の立場をとるウェブサイトでも事情は変わりません。この投稿の筆者も「ブッシュの強引なイラク攻撃は、やはり許せません」と続けることで反戦の立場をとってはいます。が、読む人によっては「そんなにひどいんなら、やはりフセインは叩かなければ」と思いかねないほど、フセインの独裁ぶりの印象描写
が際だっています。(この後、この投稿はブッシュ大統領や小泉首相といった指導者を選んでしまった国民の愚かさに言及し、そのせいでテロの標的になるかも知れない我が身を嘆いています。)
この投稿には、フセインの悪魔的独裁ぶりを語る日本語での投稿や議論にしばしばみられる、もうひとつの特徴もあらわれています。フセインの独裁ぶりを指摘しつつ、いま、日本人にとってもっとも身近な独裁者、金正日がバイプレーヤーとして登場してくる点です。金正日そのものの独裁ぶりについて唾を飛ばさんばかりに口汚く罵る人もあれば、上記の筆者のように「これは金正日にも同じ」と簡単に片づけてしまう場合も少なくありませんが、いずれにせよ、フセインも金正日も悪魔のごとき独裁者と断定することにおいては大差ありません。
これはほんとうでしょうか。フセインが独裁者なのは事実です。いくつかの悪政を実行したのも事実のようです。でも、ほんとうに他国の武力によって政権転覆を謀る以外に解決策がないほどの非道ぶりだったのでしょうか。
わたし(参戦国イギリス在住、7歳児あり)とジャーニ(参戦国アメリカ西海岸在住、5歳児あり)は、熱くなる一方のフセイン叩きを危惧していました。攻撃を開始したアメリカ人やイギリス人ならモチベーションを保つために必要かも知れませんが、同盟国日本の「戦争嫌い」の人たちのあいだにさえ、こうした「フセイン叩き」がなんの疑いもなく広がっているのです。そしてそれは容易に「悪の枢軸」の一角を占める「金正日叩き」に変わります。参戦を容認させようと必死になっていた戦前(そう、いまやわずか12日前が戦前です)のアメリカやイギリスの姿を見るようです。無批判にフセイン叩きに加わることで、それを金正日批判に結びつけることで、実は対北朝鮮戦争のプロパガンダに荷担していることに気づいて欲しいと思います。戦争に反対する同じ人が、それと知らずに戦争への道筋をならしている、わたしたちにはそう見えます。
以下はわたしとジャーニのあいだのメールのやりとりと、わたしが参加したある掲示板への投稿、メーリングリストの投稿などから構成しました。たいへん長いです。前後編に分けようかと迷いましたが全部1度に配信します。お時間のある時にお読みいただけると幸いです。そんなことはわかっていると思うかたは遠慮なく読み飛ばしてください。
まず、アメリカクリスチャン同盟(The Christian Coalition of America)のイラク攻撃賛成声明からお読みください。アメリカクリスチャン同盟は2百万人以上の支持者を持つ、アメリカ最大の大衆政治活動組織だそうです。(翻訳はあるキリスト教団体のホームページから無断借用しました。)
アメリカクリスチャン同盟議長ロバータ・コウムズは2003年3月8日、次のような声明を発表した。
「我々は、イラクの独裁者サダム・フセインの体制の終結を目指すブッシュ大統領に心から賛同する。ここ数週間、我々は、多くのイラクの反体制の人々と会い、フセインが自国民に対して行っている残忍な支配と過酷な扱いについて詳細な情報を入手した。我々は、アメリカ国民に、ブッシュ大統領に賛同し、その対テロリスト戦争と、地上のあらゆる地域に民主主義と西洋的価値観を導入する試みに賛同するよう、強く呼びかける。ブッシュ大統領は友人であり、非常に勇敢な指導者である。私は、彼のために毎日祈りをささげている。フセインは、数多くの無実の市民の死に対して責任がある。もし彼を野放しにすれば、さらに多くの無実の人々が死ぬ
ことになる。我々は、大統領を支持し、サダム・フセインがすみやかに敗北し、死去することを祈るものである」
【ジャーニのメール】(英国時間3月22日)
あるメーリングリストで以下の投稿を見つけました。この内容はこれからとても大事なことになるような気がします。複数のメーリングリストに参加して、また様々なメディアを通
じて見ていると、画一的に流されるイラクへのイメージ付けは、戦争反対を訴える人の中にも疑問としてありつづけ、戦争賛成派のダシにされ続けています。ここで反論が崩れる人も多く、戦争開始とともにブッシュ政権の支持率が上がったことに対処していくためにも、この基本的なことをしっかり踏まえるのは必要だと思います。
【アラブ専門家 阿部政雄さんの投稿】(日本時間3月22日)
アラブの阿部です。(中略)小生が、サダム・フセイン大統領を支持するのは、1月15日の大統領信任投票で100%のイラク国民が支持していることにも示されているように、イラク国民によって支持されているから、サダム・フセインを支持していることも大きな理由の一つです。もちろん、この数字の中には、サダム・フセインを好きでない人びとも含まれていると思います。しかし、イラク国民は、さまざまな宗派、人種などから構成されるイラクを一つにまとめ、イラクを超大国アメリカに簡単に膝を屈しない国家に育て、イラク国民としての意識をうえつけたのは、バアス党の長い間の活動のたまものであり、彼のリーダシップがあったればこそと思っています。
何回も言っているように、小生は、サダム・フセインは神様だとは思っていません。
それは、1991年1月10日付けの朝日新聞の論壇に、元駐イラク大使で当時の中東調査会理事であった島静一氏(76才)が投稿した「湾岸」解決へ米と一線画せ「無条件降伏」迫るより政治的打開をと題する論文の中の「フセイン大統領はヒトラ−的独裁者でも狂人でもない。優れた戦略家、理論家で、果
断な実践家でもある。長い植民地支配の結果、合はみ争うように運命づけられて『シシの力とキツネの狡智(こうち)』をもって戦国時代を生きているアラブ指導者の一人なのである」と言う言葉に全く共感するからです。
島大使は、この文章を書いたため、外交官のくせにサダム・フセインを誉めるとは何ごとぞと、当時の自民党タカ派から随分攻撃されました。しかしこれは、4年あまり駐イラクの大使としてつぶさにイラクの政治の現実を直視された立派な外交官であった島大使が把握された結論でした。小生も長い間のイラクとの接触の末に、この言葉は正しいと言うことが分かったのです。
また、下記の引用の文章も小生の言葉ではなく、スコット・リッター氏の言葉なのです。(編者注→スコット・リッター氏の言葉とは「過去三〇年にわたるバース党支配を見る限り、イラク政府は磐石といえるでしょう。文化、経済、教育、政治など、バース党はイラク人の生活すべてに浸透しています。この国の内情について単純化し過ぎ、サダム・フセインとそれ以外の政治機構とを分離できるかのような見方をするのは、無責任です。そういう方法は通
用しません。私の現実主義的な理解によれば、イラク政府は大方の人びとが考えている以上にイラク国内で強い政権基盤を築いています。イラク政府を見くびってはいけません<」)
サダム・フセインがいなかったら、イラクはとっくにアメリカの餌食になっていたことと思っています。
小生のサダム・フセイン観も、それこそ1973年に始めてイラクを訪れた時から、30年間イラクをウオッチしてきてた結果
の結論なのです。いや、この訪問の前の数年間−1966年から1972年までアラブ連盟東京事務所にいたころから、アラブ諸国の大使館との広報活動の一端を担っていて、多くのアラブ諸国の大使館と接触した中で、イラクという国家は原則を重んじる国であること、国のために献身する人材の豊富な国であることを知り、次第に引き付けられていったからです。
ここ3、4年の付き合いではなく、それこそ、34、5年の接触の結果つかみえた結論なのです。決してイラクに取り入るために、イラクにお追従を言ったから、イラクの信頼を得たのだとは思わないで下さい。
いや、正直言って、最初は小生も人並みにイラクは独裁国家だ、秘密警察がうようよいると聞かされていたので、始めの頃はイラクを恐い国だと警戒心を抱いていたことをいろいろ思い出します。
しかしそれは「幽霊の正体見たり枯れ尾花」であったことにだんだんと気がついてきました。また、アメリカの馬鹿の標本みたいなブッシュ大統領に、まるで、条件反射するペット犬みたいな首相を頂いている日本の現実を考えた時に、国民の大多数から信任を受けているイラクの大統領を、”独裁者”だなど簡単に断罪することは不遜ではないかと言う思いがあります。
アメリカは9ー11事件以後、イラク攻撃の理由を当初は、イラクとアルカイーダと関係があるとしていたが、それが両者は全く関係がないことが世界的に分かってきたので、次に大量
破壊兵器を持っていると主張して、イラクの武装解除を行うため(これはイスラエルの意を受けて)大量
殺戮兵器の査察問題を持ち出したものの、それも世界の大多数の国々が査察の継続を主張することが分かったため、失敗し、最後の手段として、サダム・フセインは”独裁者”だからと主張し、イラクを民主化するためイラクに侵攻する口実にしているのです。今では、ブッシュこそ独裁者ということを多くの人びとが思い始めています。
サダム・フセイン悪魔論は、イランイラク戦争で、イラクが勝ち残った時点で、突如、浮上してきたものです。こうした西欧のマスメディアの国際的世論操作の手口は、3000年前の神話に近い話を根拠にイスラエルを人工的につくってしまったり、ホメーニ−のイスラム原理主義革命を世界の政治に新風を送る第3の道としておだてあげ、イラクイラン戦争の伏線とした時に使った西欧のメディアの遣り口、常套手段だと思っています。(中略)
サダム・フセインー独裁者と言っている人びとの論拠は、ほとんど欧米のメディアからの受け売りで、そうして記事を讀んでいる間に自然と色眼鏡越しにしか、イラクを見ることができなくなっているのです。そして、イラクに行って、安手の捕り物帳の御用聞きのように、サダム・フセインの悪口を聞き出そうとする日本のマスコミの態度も小生の趣味とは大きな隔たりがあります。
湾岸戦争にしても、今回のアメリカからの攻撃に対するイラクの毅然たる態度にしても、たった一国のイラクが超大国アメリカとその連合軍に対峙しうる力を持つにいたったのも、長い間の異民族の支配ー蒙古、トルコ、イギリスの統治の中で傷めつけられたイラク国民全体の怒り、祖国の独立を願う感情を吸い上げ、まとめあげる指導力をもっているからこそ、サダム・フセインが大統領の座にあるのです。
正直言って、いとも安易に、他国の元首であるサダム・フセイン大統領に亡命をすすめるような主張をするのなら、いっそ小泉氏に日本を離れ、アメリカに亡命して、アメリカで選挙に出てほしいと言いたいくらいです。(中略)
○○さんがサダム・フセインをどう評価しようとそれは御自由です。(編者注→この原稿が掲載されていたメーリングリストで阿部氏と対立していた人物。フセイン悪魔論支持、戦争には反対)しかし、小生は、たとえ誰であれ、その人の持つポジティブな面
からできるだけ学ぼうと言う態度はこれまでの信条でしたし、今後も生きている限り続けていくつもりです。高い旅費まで工面
して、中東まで行って、わざわざその国のネガティブな面を拾い集めることは時間とエネルギー無駄
だと思っています。ネガティブな面など永田町を見ていれば掃いて捨てるほどあります。それを直すことは、国会議員の方々の務めであり、国の主権者としてのわれわれの責務です。お互いに日本の将来のためにおおいにがんばりましょう。
【ジャーニのメール】(英国時間3月23日)
またまたしつこいかもしれませんが、転送します。なるほど、と思うところがありましたので<。
【アラブ専門家 阿部政雄さんの投稿】(日本時間3月24日)
アラブ問題の阿部です。小生は、凶暴な怪獣のようなブッシュ政権とシオニスト国家イスラエルに敢然と抵抗するサダム・フセイン大統領を指導者とするイラク国民の戦いは、新しい人類の未来を開く重要な戦いの歴史の1ページだと思っています。それは、次第に明らかになっていくことでしょう。
小生は、これまで長い間、反戦の運動にひびを入れたくないとの思いから、なるべく、サダム・フセインを悪魔だの冷酷な独裁者などを簡単にレッテルを貼っている人びとへの批判を差し控えてきましたが、この頃、アメリカが「イラクの民主化」を唱え始めてから、それこそ、ネコも杓子も轟々たるサダム・フセイン非難の合唱を行っていることに悲しい思いがしています。(もちろん、その論者の多くがアメリカに同調するために言っているとは思いませんが)
とりわけ、進歩派を自称する人びとの中にそうした人が多いのは、愚かしいと言おうか、嘆かわしいと言おうか、全く中東アラブの現代史を理解しない、観念論です。
例えばサダム・フセインは、独裁者で国民を弾圧していると言うことを吹聴する人びとがいます。しかし、どう言う理由で、ある特定の人物や、グループが現政権の取締の対象となったかと言うことを具体的に提示しなければ、その是非を論じることは出来ませんし、過った結論をだしてしまう危険を内包しています。
例えば、イラクは御承知のように、アラブ諸国の中で際立って政教分離の国です。女性の活動も活発な国です。しかし、これはイスラム原理主義の立場に立つ人びとは、こうしたサダム・フセイン率いるバアス党の政策は、西欧かぶれの堕落した背教徒として断罪に値する悪党どもとなるわけです。
例えば、イランイラク戦争の起きた1980年4月にムスタンシリ−ア大学で発生したイラクのイスラム原理主義のダワ党による現副首相のタリク・アジーズ外相の暗殺未遂事件で、同外相を負傷させ、数人の学生が殺された事件がありました。たしか、その学生たちの葬儀にも爆弾が投げ込まれたと記憶しています。この場合、それぞれの宗教は大事にするが(現にサダム・フセイン大統領も敬けんなイスラム教徒です)、特定の宗派が国の政治に関与することを断じて許さないと言うバアス党の政策は立派だと思います。中国や韓国の厳しい批判などどこ吹く風かと、靖国神社に参拝する時代錯誤のどこかの無定見首相とは、比較にならない、近代的な政治なのです。
かって、ナセル大統領が、エジプトのムスリム同胞団を厳しく取り締まったのも、ナセルのセキュラリズム(非宗教主義)のため、暗殺されようとしてたためです。自分の国を立派な近代的、民主的国家とするためには、命がけの戦いになるのです。サダム・フセインを悪く言う人びとは、こうした面
など一言も触れません。
イラクの南部がシーア派が多いから、反サダム・フセインだとか、イラク政権はスンニ−派が独占しているとか、こうした宗教を過大に持ち上げる態度は、帝国主義の「分割支配」に手を貸しているに過ぎません。それが自称進歩気取りの知識人が無自覚に文章にしたり、発言しているのを見聞きする度に、もっと責任ある態度をとってほしいと叫びたくなります。日本で、浄土宗がいいとか、日蓮宗が正当だとか、カトリックこそ、プロテスタントこそ真の宗教だと主張するのと代わりません。それぞれの宗教には立派な教えがあると思います。
本当に、知識人やマスメディアの責任は大きいと思います。かって、日本と戦う蒋介石をアメリカの後押しされた軍閥の頭目のように印象づけ、中国の抗日運動を匪賊と罵り、朝鮮の解放運動を馬賊の集団だと信じ込まされていた戦時中の報道ぶりを今イランイラク戦争直後から、凄まじい勢いで流布されているサダム・フセイン悪魔論の中にまざまざと再現されていると言う危険を感じます。
もう少し、世界の現代史の基本を学んで頂きたいものです。さもないと、本来味方であるはずの人びとがお互いに傷つけあって、弱体化し、凶暴な大国の情報操作の餌食にされてしまうのです。
非力ですが、小生が精一杯イラクの現状を伝えたいと思っているのも、こうした同士討ちに終止符を打ち、凶悪の根源、アメリカの巨大な産軍複合体と石油資本の営業部たるブッシュ政権とパレスチナ人民の解消を狙うイスラエルに対する共同戦線を樹立せねばなりません。この元凶を倒さねば、私たち人類の未来はますます悲惨なものになって行ってしまうのです。小生のささやかな努力の一端として『イラクとともに30年ー誇り高き文明の国イラク』(出帆新社)が月末に発行できそうです。また案内いたします。御期待下さい。
【掲示板へのわたしの投稿】(日本時間3月24日)
(ある掲示板で「解放されて喜ぶイラクの子ども」の写真を例にあげ、フセイン悪魔論が大々的に語られているのを見過ごせなくて、つい深入り。あまりにも一方的な展開に水を差し、議論を巻き起こすのが目的だったので少々偏った投稿ではあります。その点をご考慮の上、お読みいただければ幸いです)
フセイン悪魔説には注意が必要だと感じています。それは欧米人のヒトラー=ホロコーストのオブセッションに由来するものだと思われるからです。
わたしの住むイギリスではヒトラーの暴虐について学校で徹底的に学ばせるようです。世界全体の歴史の中ではほんの1ページにすぎないこのトピックだけを、その他の大きな歴史の学習を犠牲にしても徹底して学びます。ヒトラーのような悪魔(これには疑問の余地はないように思いますが)を野放しにしてしまったという反省から、もう二度とこのようなことがないようにと、ほとんどオブセッションになるまで学習させられます。
そのため人々は、ある独裁政権を転覆させようとする政府の意図や、それにそったキャンペーンを展開するメディアに過剰に反応し、やりすぎた独裁者=ヒトラーの悪魔像が比較的簡単にできあがってしまうのです。これは理由のいかんを問わず、戦争とは悪であると決めつける日本人のオブセッションによく似ています。思考停止状態に陥るのです。断定は避けますが、エスニッククレンジング=ホロコーストというキャンペーンによって、初めての人道的理由による軍事介入となったコソボ紛争にも同様の影響を感じています。わたしは、ミロシェビッチがヒトラーに匹敵するほどの悪魔的独裁者であったとは思えないのです。
同様にフセイン悪魔説にも疑問を感じています。独裁者に率いられた国(国民)は独裁的な政府を必要としている状況が多いように思うからです。利害の対立する多民族国家であったり、宗教対立があったり、誰かが強権でまとめない限り、果
てしない内戦に突入する可能性を秘めている場合がよくあります。アフガニスタンが良い例でしょう。アメリカンデモクラシーによってせっかく民主化されたのに、首都から離れた地域ではまた内戦が始まっています。多かれ少なかれ独裁者とは国内に敵を多く持つものです。また統治上の理由から一部民族を弾圧することも珍しいことではありません。それを良いことと言っているわけではないので誤解のないようにお読みいただきたいのですが、フセインはこれほどの暴虐で叩かれなければならないほどの極悪な独裁者ではないのではないでしょうか。世界にはこの程度の独裁者はありふれています。フセイン程度の独裁ぶりでこれだけ徹底して叩かれるのならば、ほぼ同程度の独裁国家すべてが同じようなキャンペーンの犠牲となる可能性があります。
フセインが悪魔だと確信した時点まで立ち返って、いったいどんな情報が自分の確信のもとになっているのか検証する必要があると思います。
(この投稿には「フセインを擁護するのか」とか「そんなに素晴らしい国ならご一家でお引っ越しなさったら」等々の批判皮肉をいただきましたが、予想を超えるほどひどい中傷はありませんでした。また、これも予想通
り、金正日を引き合いに出しての批判もありました。それに対する反論は原稿の後半に転記してありますが、その前に「日本人のオブセッションとは何か」などいくつかの疑問点に対してわたしなりに答えた投稿を転記します。長くなってすみません)
【掲示板へのわたしの投稿】(日本時間3月24日)
返信をありがとうございます。お尋ねの「理由のいかんを問わず戦争は悪である」という日本人のオブセッション、というのは、イギリスに住むようになってからインプットした考え方です。というのも「理由のいかんを問わず戦争は悪である」と言ってしまうと、そこから先に議論が進まないのです。
「理由によってはやってよい戦争もある」のかどうかについては、今までも、今も、これからも考え続けるわたしの課題ですが、(これは日本が軍隊を持つべきかどうかもかかわってきます。実際にはすでに持ってますが、それを軍隊として機能させるかどうかですね。)日本では、この議論がほとんどなされていないというのがわたしの感想です。オブセッションから解き放たれて、この議論が深められれば、世界の「やって良い戦争もある」と考えるほとんどの国の人々に対して、なぜ、戦争はやってはいけないのか、という説得力のある答えを見つけだすことも可能だと思うのです。
「罪のない人が犠牲になるから」は、説得力をもちません。「罪のない多数の人々を解放するために原爆を落とした」という理屈が平然とまかりとおるのですから。進行中のイラク攻撃も、同じ理由に基づいて行われています。たぶん、もっと普遍的な、倫理に訴える理由が必要だと思っていますが、いまのところ見つかっていません。
【掲示板へのわたしの投稿】(日本時間3月26日)
また来ました。お返事がたくさんあって嬉しいです。高飛車だの奢っているだの言われることは承知で書きますが、わたしが日本の多くの人たちに望んでいるのは、何事についても、ここで行われているような議論が起きることです。例えば、新しい法案が国会に提出され、それが市民の生活に大きな影響のあるものなら、職場や学校や家庭や飲み屋で議論が起きるのが当然だと思います。市民が関心を示せば国会議員だって居眠りしているわけにはいかないでしょう。その法案を通
したい側も阻止したい側も、それぞれがエビデンスを出して説得しなければならなくなります。結果
として、多くの情報が一般に公開されることになり、もし公開されない情報があるとすれば、それはなぜかという議論が起きるでしょう。結果
を得るために時間はかかるでしょうが、仮にその法案が成立したとしても、こんなはずではなかったという事態は避けられると思うのです。法案審議を引き合いに出しましたが、これはもっと身近な問題でも同じだと思います。
こうやって議論を起こすと、時には議論のための議論をするという経過をたどることがありますが、それでも何も議論しないよりずっとましだと思います。イギリスには一般
視聴者参加の討論番組があり、毎週の視聴率も安定しているようです。国会議員や市長や学者がパネラーになるので、もたもた答弁しているとすぐ人気がなくなります。パリに住む友人も同様の番組があると言っていました。
(「理由のいかんを問わず、戦争は悪であると決め付ける日本人」というのは、どの日本人ですか?との質問に対して)
ソースは朝日新聞衛星版です。いま手元にないので具体的な数字をあげることはできませんが、英米軍によるイラク攻撃開始後、朝日新聞が行った聞き取り調査の結果
からそう思いました。この攻撃に反対する人のうち「正当な理由がないから」と、たぶんもう一つは「国連が認めていないから」(だったと思います)といった、今回のこの攻撃に限っての理由を示した人のパーセンテージはごくわずかで、残りのほとんど(ほんとうにほとんどでした)は「戦争はいけないことだから」と言う回答を支持していたのです。これには正直言って驚きと共にほんとうにがっかりしました。ほかのどの戦争とも違う、この攻撃だけに限った不当な理由がやまほどあるのに一般
論にしかなっていません。
イギリス人は(たぶん他の多くの国も、いい悪いは別として)戦争慣れしているので、よほどのことがない限り、今回のような大きな反戦運動は起きないと思います。もしも「戦争は悪いことだから」とだけ思って反戦デモに参加している日本の人が(それでもいいですが)、世界中で起きている反戦運動が同じ理由によるものだと思っていたら大きな間違いだと思うのです。
とは言え、世界の流れは戦争は二十世紀の遺物といった意識に変わってきているようにも思うので、今後は「戦争は悪いことだから」が反戦理由の主流にならないとも限らないと思います。けれど、それは国連やそれぞれの国や職場や学校やネット上で山ほどの議論を経たあとになるでしょう。日本の多くの人が先の大戦の結果
から「戦争は悪いことだから」と学んだのであれば、率先してその議論を深め、まだ戦争をやりたがっている人たちを説得すべきでしょう。60年近くも他国を侵略せず、内戦もなく、武器輸出もせず(表向きはですが)、どの戦争にも直接コミットしなかった珍しい大国なのですから。
(イギリスでのホロコースト教育についての質問を受けて)
うちの息子はメインストリームの学校へ行っていないので実体験はありませんが(注→シュタイナー学校に通
っています)、公立学校に子どもを通わせているかたや新聞などからの知識です。イギリスの世界史教育はほぼヨーロッパ中心に限られているとみていいようです。高等教育を受けたり自分で学ばない限り、歴史観、世界観は偏らざるをえないと思います。
今年の初めだったと思いますが、ドイツの教育相かなにか(不確かですみません)が、いつまでもヒトラーとホロコーストのことばかり教えるのはやめてくれ、戦後のドイツはその反省に立ってたいへんな努力をしてきたのに偏見が取り除かれない、と(たぶんオフィシャルではなかったと思いますが)抗議していました。余談ですが、知人のドイツ人の情報によると(一般
論かどうかは不明)、ドイツでは有名なユダヤ人収容所のドキュメンタリー『夜と霧』などを子どものころから徹底して見せられるので、『シンドラーのリスト』などを見ても甘くて甘くて涙も出ない、ということでした。
また、Aレベル(大学資格試験)の社会科学の選択には間違いなくホロコーストが入っています。イギリスの試験は論文での解答になるので、試験に合格するためにはひとつのことを深く研究しなければなりません。ホロコーストを課題に選んだ学生は必然的にものすごく詳しくなります。また、これも新聞によるものですが「なぜわれわれはヒトラーにオブセッションを持つのか」といった類の特集を読んだこともあります。
日本の世界史教育は広く浅く、まんべんなく教える点で優れていると思いますが、現代史から教えてくれればもっといいのになあ、と思います。
【ジャーニのメール】(英国時間3月25日)
「サダム悪魔論」悩ましいところですね。でも、往々にして自分の価値観に縛られた人、悪魔論にどっぷり浸かった人は、どんなものを見ても「ああ、やっぱり」と言う反応しか示さないように思うので、客観的、鳥瞰的に見てもらうにはすごい努力がいるかもしれませんね。転送した文章を書いた阿部さんが、その発言をする度に、長年アラブ、とりわけイラクにどっぷり浸かり過ぎて、政府に都合のいいように利用されているのだ、という反論を受けてとても悔しい思いをされています。でも、私は森住さん(『湾岸戦争の子どもたち』を撮影したフォトジャーナリスト)の話を聞いていたので、きっと一理あるのだろうと捉えました。
実際、米英軍がイラクの人々はフセインに反感を持っているので、戦いなんかすぐに放棄して戦争は短期集結するだろうと読んでいたのが、どうやらそうではなかったと、泥沼化しそうな徴候を見せているとニュースで読みました。アメリカがいかに一面
的な見方、独断的な見方しかしないかの格好の一例な気がします。
いずれにしても、その国の文化背景を理解した上で、その国の国民が自決権を持ち、必要であれば他国民が介入でなく、サポートするというのが望ましいやり方だと思うのに。でも、結局のところ、デモ集会でアフリカンアメリカンの男性がすごみを持った声で、写
真集(編者注→『湾岸戦争の子どもたち』)を掲げている私にいいましたが、「これはつまり人種差別
なんだ」ということなのでしょう。レイシズムというのが根底にある限り、解決はとても難しいです。アメリカに住んでいると、強く意識されることがままあります。同時にこういう言われなき差別
の雰囲気を在日の人々は感じながら生活しているのか、と。プロジェクトのメンバーに在日だった女の子がいるので、いろんなことを知ることができました。
【掲示板へのわたしの投稿】(日本時間3月26日)
(「人間の盾になっていた日本人団体『アラブイスラーム文化協会』がイラクを脱出するそうですね。今になって脱出<はこの際問わないとして、『日本政府に脱出の際の安全確保』を求めているとか<。なんでー? 今まで散々大使館の退避勧告を無視(と敢えて言います)してきた人たちが、
なぜ今になって、この最も危険な今になって、日本政府に安全確保を求めるのか? すごく疑問。この人たちの安全を確保するために、どれだけの人が危険にさらされるのだろう?」という投稿に対して)
個人的には存じ上げませんが、イスラーム文化協会のジャミーラ高橋さんには深い尊敬の念を抱いています。「人間の盾」の有効性については、これから様々な議論が起こると思います。難しい問題です。
彼女は「人間の盾」を率いてイラクに飛び、攻撃開始後もその地にとどまりました。攻撃前に待避させようとやっきになる日本領事館のひとに人殺しと罵られたとどこかで読みました。中には帰国した人もありましたが、残られたかたは自分の意志で残られたわけです。彼女が強制したわけではありません。残った人たちの身分を守るために彼女が奔走している様子を、やはりイラクにとどまるジャーナリストの日記で読みました。
いま、イラクからの待避を急いでいるのは、イラク政府から正式に国外退去命令がでたせいだと思いますが、おそらく、彼女ひとりなら、領事館や外務省に助けを求めたりはしないでしょう。彼女はアラビア語が話せるし、自分の身は自分で守れるでしょうから。たとえ戦闘に巻き込まれて死ぬ
ようなことがあっても、たぶんその覚悟はできていると思います。したがって、彼女は他の人たちの安全への責任上、そうしているのだと思います。
また、日本政府は日本人の安全を守る義務があります。それは「人間の盾」でも、たとえ犯罪者でも同様にもっている日本人の権利です。外務省はその権利をないがしろにしてはならないし、どのような経過があったにしろ、日本人がその権利を遠慮する理由はありません。
各国から集まった「人間の盾」は攻撃前にリーダー格の5人を失いました。その5人は、いかなる理由か知りませんが(後述→「人間の盾」となる場所をイラク政府に指定されたのに反発したようです)イラク政府から国外退去処分にされたのです。その時点で帰国した人もたくさんいましたし、残った人々が統制のとれた有益な働きができるか疑問視する声もありました。その中で日本人チームのリーダー格だった彼女がかれらの命を守るために、いかなる批判を受けようとも外務省に保護を求めたのは、勇気ある決断だと思います。
(この投稿に対して、紛争国での居住経験のあるかたから自分の身は自分で守るのが原則、という意見をもらいました。)
日本国政府が国外にいる邦人保護につとめる義務と、日本国政府に保護を求める邦人の権利について前回書きました。これはあくまでも原則を書いたのみです。なぜなら、当然の権利を履行しようとしたジャミーラさんがその行動によって非難を受けていたからです。メディアもおそらくは同じような姿勢でこの話を取材し、報道しているだろうことが容易に想像できます。無事に帰り着けたとして、ジャミーラさんをはじめとする「人間の盾」の人々が、帰国直後の拉致被害者のケースと似たような集団ヒステリーの嵐にさらされるのかと思うといたたまれない気持ちになります。「思い上がりだったかも」というコメントをもらしたかたをはじめ、おそらくみなが心身共に疲れ果
て、無力感にさいなまれていると思います。どなたも、追いつめられて自殺するようなことがないように祈ります。
話がややこしくなりそうだったのであえて書きませんでしたが、日本政府の在外邦人保護は、現実には あまり機能していません。アフリカのとある国のパスポートコントロールで理由もなくパスポートを取り上げられそうになり、現地の日本領事館に電話をかけてもらったところ、担当者は休暇に出ていると門前払いを食わされたとかいった、あきれるような対応をしばしば耳にします。上記のケースでは、本人がパスポートコントロールに小金を渡して危機を脱したそうですが、日本人のほとんどいない地域でパスポートを失う危険を領事館の人間が知らないはずがありません。
イギリスに長く住む日本人にはブリティッシュパスポートの所持者が少なくありません。我が家は日本のパスポートを使っていますが、とったほうがいいよと勧められています。日本は二重国籍を認めていないので取得すると日本国籍を捨てることになりますが、内緒で両方持っているひともけっこういます。ただ単に旅行するだけなら日本のパスポートで十分なのに、なぜわざわざブリティッシュパスポートを取得するかと言えば、ブリティッシュパスポートは危機に強いからです。植民地政策で早くから海外に邦人を送り出している経験の蓄積が危機対策に生かされているようです。そう言えば、日本も早くから南米などに移民を送ってますね。移民と言うより棄民扱いだということがよく言われていますが。
そんなわけで、義務と権利の話はあくまでも、ジャミーラさんを弁護するための原則論です。実際に外国に滞在する際は自分のことは自分で守るのが原則です。なぜなら日本の現地領事館は多くの場合、あてにならないからです。「自分のことは自分で」と外務省のホームページにも書いてあるとか聞きました。ほんとうかどうかは知りません。
【掲示板へのわたしの投稿】(日本時間3月25日)
叩かれついでにもうひとつアップします。金正日についての転送メールです。
仮に、フセインも金正日もヒトラーに匹敵するほどの悪魔的独裁者だったとします。たとえそうであっても、他国が暴力でその政権転覆を計っていいことにはなりません。コソボの時ほどの緊急性もありませんでした。まだあまり機能していませんが国際司法裁判所もできたことだし、ほかにももっと平和的な介入のしかたがあるはずです。クルドに対する人道的犯罪で告発するとか、経済的に自立できる国民を増やし、民意を高め、国連の監視のもとに普通
選挙をするとか。もちろん、まだるっこしいほど時間がかかりますが、戦争で独裁者を無理矢理引きずり降ろして他国の手だけで作り上げた民主主義が、真実、機能するとは思えません。
下のアドレスはバスラの被害を撮影したアルジャジーラのサイトです。小さな子どもの死体も映っているので、どなたにでもおすすめできるものではありません。
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2003/3/3-22-26.htm
(注→一時アクセス不能になっていましたが回復したようです。ただし、この投稿で説明している女の子の写
真はずっと下のほうに行ってしまいました)
写真の女の子も、ここにいない別の子どもたちも、劣化ウラン弾の被害で死ぬかもしれない子どもたちも、イラクの民主化(それはどこのものとも違う、もちろんアメリカとは違う、イラクなりのものでなくてはならないと思います)のために大きな力になったはずです。例え、なんの役に立たなくても、それぞれの親にとっては、ただ健康に生きているだけで良かったはずです。悪魔のような独裁者を取り除くためにこの子は死んだのでしょうか。たとえ悪魔のような独裁者に支配されていても、生きていたかったのではないでしょうか。
何がこの攻撃を終わらせるために有効か、冷静に考えなければならないと思っています。フセイン悪魔論は攻撃側の正当性を強化しこそすれ、止める役には立ちません。ほんとうに悪魔だったのかどうかは、攻撃を止めてから考えればいいことです。攻撃が始まる前に集められたイラクの高校生たちの作文を読みました。みな、一生懸命にこの攻撃を始めないでくれと懇願しています。
今日のガーディアン紙に今回のshock and awe作戦について詳しく出ていましたが、引き合いに出されているのは広島と長崎です。そうらしいことは前から知っていましたが、ご丁寧に見渡す限り瓦礫ばかりの広島の写
真まで載っていました。わたしは悔しいです。原爆直後だけでなくその後の原爆症でいったいどれほどの人が亡くなったのか、空襲でどれだけの人が亡くなったのか、その人たちの犠牲までもが今度の作戦のヒントになっているとは。原爆2発で降伏し、戦後、アメリカの思い通
りに従順になった日本の現在の姿をふまえて、イラクでも試してみようということでしょう。今度は核兵器は使わないし、人的被害も最小限にとどめるなどといったコメントが載っていましたが、ピンポイント爆撃には使わないB52も出撃しています。B52はベトナムで絨毯爆撃をした戦闘機でしょう、知識がなくてわかりませんが。未確認ですが、病院や学校にも着弾したとも聞いています。何か言い返したい、投書したいと思いましたが、いかんせん、それほどの知識も英作文力もないので、ただ悔しがるだけです。でも、自分の無力で言い返せないことよりもっと悔しいのは、いまの日本政府がその通
りだからです。
論点がかなりずれましたね、すみません。ただ、独裁者の定義にしろ、民主主義や自由の定義にしろ、様々な見方を検証する必要があると思います。北朝鮮から拉致被害者が帰国してからの日本の報道や人々の動きを遠くから見ていると、わたしは恐ろしいです。もうじき、アメリカは迎撃ミサイルを法外な値段で売りつけてきます。その次は核兵器の保有を許すでしょう。もっと議論を深めて、それにきちんと「ノー」と言えるだけの理論武装をしなければならないと思います。攻撃を止めることはできなかったけれど、安保理での議論の応酬は、まだまだ言論が健在に機能する社会があることを教えてくれました。
【ジャーニからの筆者不明のテキストの転送】(英国時間3月25日)
イラクにたいしてのアメリカの攻撃に反対することと同時に、今、アジアの平和に対しての日本人の責任と役割は、大きいと思います。イラクに対する軍事攻撃に対しては、冷静に考えることの出来る日本人が、アジアの問題に対しては、冷静さを欠いているような気がしてなりません。
今の、マスコミの報道は、朝鮮民主主義人民共和国に関して異常です。朝鮮の政府の公式見解をある新聞社が報道したなら、その責任者が処罰されるということが堂々とまかり通
っています。そのために一方的な報道だけが伝えられ多くの日本人がその影響を受けてしまっています。
伊勢崎の講演会でTさんも言っていましたが、朝鮮が原子力発電所を稼働させるに至った経過にしても、電力不足で困っている朝鮮が、(朝鮮は、外貨を持っていないためにエネルギーを石油に頼ることが出来ません。そのために暖房を目的に木を切ってしまったりしたことによって、洪水などの自然災害に見舞われ農業に深刻な打撃を受けました。)原子力発電所を建設することによって、エネルギー問題を解決しようとしました。
朝鮮は、旧ソ連との関係が強かったたために、原子力発電所に関しての技術は、黒鉛炉でした。しかし、黒鉛炉を稼働させた場合には比較的プルトニウムを抽出し易いということがいわれています。そこでアメリカとの間で緊張が高まりカーター元大統領が訪朝して、プルトニウムを抽出することが難しい軽水炉を建設することと、軽水炉が完成するまでの間、アメリカが重油を供給するという米朝合意がなされました。
ところがアメリカは、軽水炉の建設を真剣に行おうとしないで、重油の供給も決められただけ供給しなかったばかりか、昨年末に一方的に重油供給を打ち切りました。
そこで朝鮮は、それならば、エネルギー問題の解決のために凍結していた黒鉛炉を稼働させることを宣言しました。そのときに、政府の公式見解として核兵器を製造する意志はなく、目的は、エネルギー問題の解決にあると表明しました。もしアメリカがのぞむならばそのことを検証を通
して明らかにすることもあり得ると表明しました。
この時に、日本のすべての野党が朝鮮の公式見解を知らないで一斉に非難しました。なぜなら、この公式見解を報道する自由が日本のマスコミには、許されていませんでした。
またNPTを脱退するときも、核兵器による先制攻撃もありうるとアメリカが宣言したときに核保有国がそのような宣言をすることによって、NPT基本的な精神が踏みにじられていることを指摘して不可侵条約の締結を呼びかけました。また、IAEAの査察がアメリカの都合の良いように利用されていることを指摘しました。
朝鮮は、誰もが感じているけれども堂々と言葉に出来ないことを、はっきりと表明しました。アメリカの支配に、うんざりしている中東の人たちは、朝鮮が、NPTを脱退したときにこれは、快挙だ、朝鮮万歳と言ってデモ行進したということです。
私は、朝鮮は当然の主張していると思います。いまマスコミの関係者がそのことを報道すると首を切られてしまいます。ですから、私は、個人的な意見として聞いてもらえたらいいなと思っています。でも、この異常な状態は、一時的なものであって、平和を願う多くの人々の願いに反することは、長続きしないと確信しています。平和な世界をつくるために心を通
わせてきましょう。
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ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ
戦時詐欺
石油とはまるで無関係に
サダムはヒトラー
ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ
サダム悪魔論の検証と優れたウェブサイトの紹介も兼ねて、以下にロバート・フィスクの「戦時詐欺。石油とはまるで無関係に、サダムはヒトラー」を転載します。訳文が掲載されたアドレスは以下の通
り。これはapoさんというお名前のかたが(たぶん)個人で運営しているサイトで、「ロバート・フィスクのすべて(になる予定)」というタイトルを冠するだけあって、フィスクの過去の記事が丁寧な訳文でたくさん読めます。こんなものがただで読めるなんて幸せです。ほんと。ブックマークしてください。
http://www.geocities.co.jp/Hollywood/1123/annex/fisk/index.html
ベイルート在住のロバート・フィスクはイギリスのインディペンデント紙の中東特派員。ミドルイーストの血が流れるウエスタンと称されるほど中東との関わりは深く、今回のイラク攻撃でもバグダッドにとどまり、爆弾を落とされる側の視点でほぼ毎日、記事を寄せています。わたしは通
常、ガーディアン紙を愛読していますが、イラク攻撃が始まってからはフィスクの記事読みたさにインディペンデントに乗り換えました。ウェブサイトでも読めますが、フィスクの記事がトップニュースになった日は紙面
のレイアウトにも力が入るので、やはり新聞購入は欠かせません。
フィスクのバグダッドレポートは、メーリングリストにお名前のあるかたがたには過去に数回お送りしたかと思いますが、のちほど、この10日間のフィスクの記事をまとめたものを配信する予定です。英語ですが、辞書を片手に読む価値のあるテキストだと思います(わたしもそうです)。ぜひ若い人に転送してください。上記の「ロバート・フィスクのすべて(になる予定)」サイトでは、アルジャジーラの特派員が撮影したバスラのビデオをめぐるフィスクの原稿訳文が読めます。
ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ
戦時詐欺
石油とはまるで無関係に
サダムはヒトラー
ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ
Robert Fisk
The wartime deceptions:Saddam is Hitler and it's not about oil
(27 January 2003)
かつてイスラエル人作家ウリ・アヴネリ(※1)は、レバノン打倒のため軍隊を送った元イスラエル首相、メヘナム・ベギンに意地の悪い公開書簡を届けた。たびたび第二次世界大戦を喚起しては、ベイルートにいたヤセル・アラファトを1945年に身を隠したヒトラーに喩えるベギンに腹を立てて、アヴネリはこう書いている。「首相殿、ヒトラーはすでに死んでいます」
ブッシュとブレアに、アヴネリと同じ助言を何度送りたいと思ったことだろうか。自分たちで作りだしたサダム・フセインの悪魔像に取り憑かれ、我々に悪魔を大人しくする費用を催促している両者。ブッシュは、アメリカのチャーチルたる自分が、偶像化したサダムの牙を抜くことを考える。アメリカのEU大使、ロックウェル・シュナーベルはサダムをヒトラーと比較していた。「ヨーロッパにいたヒトラーに誰も何一つ手出しをできなかった、それは確かだ」。先週、ブリュッセルでヨーロッパ人に向けて講演したシュナーベルは「我々は彼が危険な存在になる可能性を知りながら、何もしなかったのだ。今、同じタイプの人物が(バグダッドに)いて、その存在は我々の懸念になっている」と述べた。シュナーベル氏は最後に「これは石油とは無関係だ」と説得力なく付け加え、この幼稚な平行線の理論を締めくくった。
ここまでくだらない理論に健全な人間はどう反応したらいいのか? 「ヒトラーに何もしなかった」主要国家の一つであるアメリカは、日本の真珠湾攻撃までの1939〜1940年、そしてことに1941年、豊かな中立時代を謳歌していた。そしてチャーチル=ルーズベルト同盟が受け入れるであろうことはドイツの無条件降伏のみ、と決めたとき──カサブランカでルーズベルトが突然、主張したこの要求は、チャーチルですら衝撃を受けた──ヒトラーの命運は尽きた。
サダムはといえば、そうでもないようだ。先週中にドナルド・ラムズフェルドはバグダッドのヒトラーに非常口まで提示している。お望みなら、現金が詰まったスーツケース付きで家族ともども亡命を、と。おかしな話だが、ナチス総統の逃亡が許可されるべきだと提案するようなことがあっても、チャーチルやルーズベルトをリコールしたりはしないだろう。サダムはヒトラー、と言った舌の根も乾かぬ
うちにニューヨークタイムスは、ヒトラーであることは確かだが、ヒトラーほどでもない、少なくとも戦争犯罪法廷で裁かれるまでは、と言ってみたり。法廷に置かれたところで、サダムはヒトラーではない。彼ならサウジアラビアか南米へ高飛びできる。別
の意味でも、彼はヒトラーではないのだ。
ヒトラーであったとしても、だ。我々はこんな見境のない戦争費用の用立てをさせられるのだろうか? おもにヨルダンに多いサダムを賞讃するアラブ人たちは、イラクは1週間ももたないと信じている。一部では、アメリカの第3歩兵師団がイギリス軍とバグダッドに入って3日以内、と確信している。数千でなく、数百のイラク人が殺される、というのが妥当なところだろう。だが市民の不安の種は、我々が何を行うつもりなのかということだ。米英軍に暴徒が貪ろうとするバース党員幹部の家まで防衛させるつもりだろうか?
さらに突っ込んだ場合、その後に起こることは何か? 元バース党員でも反サダムでもないイラク人が、我々に撤退を要求したとき、我々はどうするのか? この可能性を確認しておきたい。聖地であるケルバラやアル・ナジャフにあるシーア派のモスクで、アングロサクソン系アメリカ人部隊は歓迎されない。クルド人は協力への報酬を欲しがるだろう。おそらく、自治州か? あるいは連邦か? スンニ派には我々の保護が必要になるだろう。遅かれ早かれ、我々の撤退も要求するだろう。イラクはタフで暴力的な国だし、トミー・フランクス総司令官はマッカーサー将軍にはなれない。
海外に進駐軍を置く。占領下のイラクは、間違いなくイスラエルが占領するガザ地区やヨルダン川西岸と同じ様相を呈するだろう。そしてサダムの追放によって、ほかの目的同様、イラクの解放を要求するオサマ・ビン・ラーディンに道は開かれる。アメリカによる湾岸地域占有の図式に、イラクを入り込ませることは、彼にとってたやすい。そのとき、我々はアフガニスタンやパキスタンほか、数え切れない国でしてきたのと同じように、イラクでアル・カイーダと戦う準備ができているだろうか? 中東の、そして西洋の大衆がヒシヒシと感じているこういった危険について、リーダーたちは理解していない、もしくは理解したくないようだ。
アメリカに月に1回以上出かけ、週末はイギリスで過ごし、中東中を動き回っても、これまでこんなにも絶対的な、戦争に反対する非常に多くのアラブ人、ヨーロッパ人、アメリカ人らの揺るぎない決意に打ちのめされたことはなかった。金曜日の労働党の集会で、学生たちはトニー・ブレアに大多数のイギリス人がどう感じているかを立証するために、誇らしいほどの根気強さを見せた。このイラク戦争計画はウソだ、この衝突の理由は大量
破壊兵器とは何ら関係がない、ブレアとは無関係なアメリカとイスラエルの戦争のためにブッシュに追随することが、本当に必要なのか? これまでにこんなにも多くの読者から、まったく同じ感情が吐露された手紙を受け取ったことはない。労働党の大勢の人々のせいで、オール与党的な保守党がもとで、議会制への不信から、とさまざまな理由を挙げ、イギリスの大衆が戦争停止へ傾くことを許可しないイギリス民主主義を嘆く。ほとんどは持たざる者たちだが、しかしコンセプトは健在だ。サダムとアル・カイーダを関連づけるワシントンのお粗末な企てから、大量
破壊兵器に関するブレアの子どもじみた「調査書類」、一連の国連査察団の哀れな茶番に至るまで、大衆はもはやごまかされない。
コリン・パウエルはイラクの石油(の利益)はイラク国民のために信託統治によって保護されると主張したが、これと同じくらい、この戦争における石油に関わる否認は説得力に欠けるものだ。信託統治とは、まさに、第一次世界大戦後にイギリスとフランスによるパレスティナ、後のヨルダン、シリア、レバノンの委任統治を承認した国際連盟がレヴァント(地中海頭部沿岸)地域に提示したことにほかならない。この何人へも気前のよい信託統治期間に、油田を運営するのは誰か、またイラクの石油埋蔵量
を調査するのは誰か? おそらくアメリカ企業、そうでなければバカでない誰かだ。
査察官をイラクへ。ジョージ・ブッシュとディック・チェイニー、そしてドナルド・ラムズフェルド、嘆かわしくはコリン・パウエルまで、今や査察官にこれ以上時間を与えたがらない。聞き届けられない"神のご意志"があるはずがないだろう。ブッシュよ、去年の9月12日の君に戻りたまえ。人道的犯罪"9.11"のノスタルジーに溺れ、国連にイラクに査察団を送るべしとの動議を要請した君に。いつまで仕事をサボっているのか。完遂させるべき仕事があるはずだろう。もちろんブッシュが望んだのは、イラクが査察団の再調査を拒否することだったが、不気味にもイラクは国連を歓迎する。そして査察団による隠された兵器の発見を待ちわびたブッシュがぞっとするほど、査察団は何も発見しなかった。査察団は未だ調査中だ。そして、ブッシュの最終的な希望こそ、そこにある。サダムの策略にブッシュは「うんざりだ」と漏らした。彼は国連によるアメリカに武力行使の許可につながるはずの査察団の兵器発見を待ちくたびれて、うんざりしている。あれほど査察団の調査再開を望んだ彼が、今や査察団の調査を嫌い、先週ついに「時間切れだ」と吠えた。サダムのことを取り上げたが、その真意は国連査察団にある。第二次世界大戦後、国連の機関全体を創設するにあたっての自国の苦労を言い及んだに過ぎない。
かつてないほどに恩義を感じたクウェートを助けようと戦争を押し進める国がもう一国だけある、それはイスラエルだ。イスラエル首相アリエル・シャロンの外交顧問、ザルマン・ショバル(前駐米イスラエル大使)の先週の発言に耳を傾けてみよう。アメリカのイラク空爆の“長い延期”はイスラエルにとって“高くつく”と、彼は語ったのだ。軍事的な理由よりむしろ政治的に攻撃が延期されることになった場合、について「サダム・フセインが通
常兵器を開発するためにこの遅延を利用する懸念をイスラエルが抱くあらゆる原因になるはずだ」と言った。サダムを失脚させない限り、暴力はムダであり、政権交代が行われるべきだとパレスティナの上層部を説得することは難しい。「テロ攻撃を強める」ことで事態を遅らせるのは、アラファトの常套手段だった。
この凄惨なイスラエル・パレスティナの衝突も、ショバル氏の主張によれば、アメリカがイラクに侵攻すれば解決させられるという。アメリカがサダムを殲滅するまで、イスラエルのテロリズムは終わらないというのか。バグダッドでの政権交代まで、パレスティナ政府の交代もありえないと。攻撃路線を歩むブッシュに追従することで、ブレアはヨルダン川西岸とガザ地区を占領するイスラエルを間接的に支援していることになる(イスラエルはアメリカがアラファトとの「テロとの戦い」を継続中だと主張し続けている)。ブレアは、イギリス国民がそれを知らずにいるとでも信じているのだろうか? 彼はイギリス人をそれほどまで愚かだと考えているのか? イギリス軍の4分の1は、イギリス国民の80%が反対する戦争へかり出される。我々が大衆の真のパワーを見るのはすぐだ。ロンドン、マンチェスター、そしてその他の都市で、この愚行に反対する50万人以上の抗議行動を行う人々を。
いかなる議論においても本質の部分で、サダムは残忍で無慈悲な独裁者である。北朝鮮の愛すべき指導者と同じである。ただアメリカが“優れた”討論の中で“核”誇大妄想狂であると言及していたこの人物は、サダムと違い、石油は持っていないが。アラブ諸国の首都めぐりにクルド人ハラブジャ大虐殺の戦犯であるアリ“ケミカル”マジド(※2)を送る辺り、いかにもサダムのやり方だ。あたかも女子どもの殺戮令など出したこともありませんといわんばかりで、シリアのバシャール・アサド大統領やレバノンのエミール・ラフード大統領と同席させる。しかし、ブッシュとブレアはマジド外交について何も言及していない。会談したアラブ首脳の機嫌を損ねないために、くわえて神経ガスや戦争犯罪とワシントン単独のサダム支援のつながりは微妙な問題でもある。
そのかわりに我々の元には「テロ支援国家」についての脅迫がワシントンから押し寄せた。西側のジャーナリストたちはこのプロパガンダにおいて指導的な役割を果
たしている。先週のエリック・シュミットのニューヨークタイムズの記事を見てみよう。彼はアメリカが「テロ支援国家に対して立ち向かう」ことを決断した記事を書いている。その情報源は「国防省高官」「政府職員」「複数の情報局員」「官僚ら」「職員ら」「軍事官僚」「テロ専門家」「防衛官僚」だ。それならペンタゴンが直接ニューヨークタイムズに書けばいいではないか?
しかし、これこそ変化なのだ。彼らの大統領がベトナムでの祖国防衛の任を拒否したことに気づいたアメリカ人は、これでますます自国の新聞がただアメリカ政府のためにだけにつなげられた役割を果
たしていることを悟っていく。イギリス人も戦争へ行くように呼びかける新聞やテレビ、そして政治家にますます飽きていく。実際、はるかに多くのイギリス国民の代弁者となり得るのは、今やイギリス首相ブレアでなく、フランスのシラク大統領の政策であることに違いないのだ。
※1: ウリ・アブネリ 作家、ジャーナリスト。マーリブ紙などで執筆中。またイスラエル国会議員を3期勤めた経歴を持つ。現在は平和運動家として活動しており、平和団体グーシュ・シャロームの代表を務めている。
※2: アリ・ハッサン・アル・マジド将軍 1988年3月、イラン・イラク国境近くのハラブジャのクルド人を化学兵器で虐殺したとされる作戦の司令官。フセイン大統領の従兄弟にあたり、昨年リビアのカダフィ大佐との間で35億ドルのフセイン一家亡命計画を合意させたとされる。
(訳)+(編)apo
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▼ ウェブサイト情報 01
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米「戦争プロパガンダ本格化」
歴史家アンヌ・モレリ氏に聞く
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2002年10月4日(朝日新聞)
米ブッシュ政権が、イラクとの対決姿勢を強めている。国連を舞台にした外交戦は、国際世論の支持を得るための宣伝戦の様相を呈してきた。対イラク攻撃はどう正当化されるのだろうか。『戦争プロパガンダ10の法則』(邦訳・草思社刊)の著者でベルギーの歴史家、アンヌ・モレリ氏に聞いた。
(これはやや古い情報ですが、上記の原則にのっとってプロパガンダがなされているとすれば、今現在の対イラク攻撃プロパガンダにも、対北朝鮮プロパガンダにも同様のあてはめ方ができると思います)
http://homepage.mac.com/ehara_gen/jealous_gay/anne_morelli.html
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狂気のブッシュ
イラクで「人体実験」やる!
「ミニ原爆」と「高出力マイクロウェーブ兵器」
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週刊現代online(会員専用のページのようですがアクセスできます)
いったい何を考えているのか。ひたすら、攻撃の材料を探し続けるブッシュは早く実験に取りかかりたいようだ。58年前、米国は広島、長崎で原爆実験を行った。それと同じことを今度はイラクでやろうというのだ。与えられたオモチャ=最新兵器がどのぐらいの性能なのか、ブッシュはそれが知りたい。
(雑誌の性格上、やや扇情的な記事ではありますが、ペンタゴンが新兵器の実験をしようとしているのは確かなようです。先日、バグダッドの放送局が米軍によって攻撃された際には、上記の「マイクロウェーブ兵器」が使用されたのではないかと騒がれましたが、これは違いました。フランスはこの新兵器の使用に反対しています。)
http://kodansha.cplaza.ne.jp/wgendai/top_news/20030322/top_1/main.html
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編集発行 藤澤みどり
'Children of the Gulf War' photo exhibition UK tour
http://www.chimerafilms.co.uk/children.html
midori@dircon.co.uk
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